効能:毎日に「高揚感」を与える

悪魔さえも数千人、過労死してもおかしくないゲーム業界に居た頃と正反対、ホワイト200%のお墨付きをあげても良いそんな職場環境にいるのだが、その反面、張り合いのない仕事しか与えられていない。障害者であるというのが最大の理由だ。我輩が一番軽蔑する元銀行員の前上司からは、

「おまえは、生きているだけが『仕事』だ」

と言われ、大声で怒り返したことがあったが、だからと言ってどうすることもなく、それが今いる会社の方針であるからには、辞めない限りそれに従うしかない。少ないが年金を合わせれば、一人で人生を全うするのに十分な給与ではあるが、その対価として、退屈な時間を無為に会社で過ごすしかないというのも、何とも情けない気がする。

いつもの時間に出社する。貸与されているPCがあまりにもダメダメなので、起動するまでの10分間、トイレで用を足して顔を洗い、コーヒーを淹れ、気の合うシステム室までちょっと顔を出して課長さんと雑談し、席に戻る。イントラネットを少し弄り、名刺データを追加し、社員DBを修正し、暴動で連絡が取りづらい香港のオフィスまで定期連絡をし、終了。あとは定時まで、どうやって時間を潰すか…って…

社内ニートじゃん、これ

で、どうするか。

iPadを持って、空いている会議室まで忍び込み、「ガルパンのワンドロテーマはこれか」ってな感じでラクガキを始めたりするが、流石に上司から渋い顔されてしまうので、今年に入ってから完全ではないが止めている。

ゲームを堂々とするようなことはしない。モニターが丸見えだというのもあるけど、どんなゲームをしているのか、今いる会社で知られたくないし、教えたくもないから。

昼行燈の象徴として、適当な理由を作って外出し、喫茶店で暇をつぶすというのもあるが、八丁堀界隈の喫茶店は全て喫煙が認められている。一度、その手の店を覗いたことがあるが、煙草の煙が天井から30センチくらいに溜まっている光景を見て、身体の向きを180度に変えて逃げ出した。それ以前に、副流煙は心臓に悪く、あの臭いには色んなトラウマがある。

結局、糞PCの前で日がな一日、座り続けるしか選択肢がない。

でもまあ、PCの扱いについては、システム室の皆さんには負けるが、少なくとも他の従業員よりは自身が大きくある。

Pythonを弄ったり、いくつかのベンチャー会社が提供するAIを試してニヤニヤしたり、動きが怪しいがUnityを入れて戦車を動かしたり、Wordpressで色んなプラグインを試したり…

「将来、会社の各種業務の自動化のための研究です」

そういう理由で、好き放題させてくれる。ありがたいことだ。

が、やはりどうにも、飽きてしまう。

そりゃそうだろ、「研究」とかしても、これらが今の会社に導入される可能性はゼロだ。なんで断言できるか、って?実は今まで、いろんなIT関連の改善案とか、新システムとかの導入について、上から命令を出され、喜々としてそれらを進めてたのだが、トップの気変わりであっけなく潰されたのが、五指では足りないくらいあったからだ。

そう。社内ニートになったというより、こういう目にばかり遭わされたものだから、こちとら会社に何かしたいという気持ちが消え失せて、率先して社内ニートになった…というのが正しいのかもしれんな。

会社としては、我輩一人で二人分の障害者扱いになる。いるだけで良い。こっちもそのつもりで、会社のために何もしない。WinWinじゃねーかよ。

で、こういうやさぐれた状況で、我輩を慰めてくれるのが、「次のプチ貧乏旅行をどうしようかな」と考えることだ。

旅行というのは、思い立った瞬間から始まっている。旅行を思い立ち、計画する時に生まれる「高揚感」が、日々の退屈さを和らげてくれるのだ。

いつも行くあの国へのアプローチは、あのLCCで。

入国したら、さて、どこに行こうか。まだ行っていないあの街へ行くことができるかな。長距離バスや列車の情報、安宿の情報とか、会社のPCからいくらでも調べられる。全部英語や現地語だから、覗かれても気づかれないし、いくらでも誤魔化すことができる。今度の連休は飛び石だから、二日間有休を使えば丸々一週間、旅行できる。エクセルを開いて、日付を入れて…ふむ、まず飛行機のチケットから…。

お金をあまり使わないで、小さな冒険心を刺激する。

ネットであらゆる情報を比較し、少し無理ができるかどうか、自分の身体と相談する。

安宿の近くに、朝食がとれるかどうか、どんな朝食なのか、その味を想像する。

これだけで、あっという間に定時を迎えることができる。

これらを毎日繰り返すだけで、旅行の日があっという間にやってくる。

プチ貧乏旅行は、サラリーマンとして一定の収入があるが、空しい日々を持て余す中年以上の人が得られる、「高揚感」だ。

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